はじめに

冬季の生活の中でで困る事の一つに窓ガラスの結露があります。

この結露現象は、住宅の建具のアルミサッシ化と共に、内装壁仕上げのドライウォール化(ビニールクロス+石膏ボード下地)が普及し、住宅の気密性能が向上したことが主要な原因です。この種類の結露は表面結露といい、以前の木製建具、土壁の建物では余り見られませんでした。

生活に関連する結露現象は他にもいろいろありますが、特に注意する必要のある結露現象に躯体内結露があります。

躯体内結露とは、木造の住宅の壁の中や、床構造内部、天井裏等、構造・躯体の内部で発生する結露のことです。

その発生の主な原因に、住宅の高気密化・高断熱化・建材の化学製品依存等が考えられます。

特に、“住宅の省エネルギー化”の名の下に急普及した、住宅の断熱化がその大きな要因となっていることは否めません

40年程前、24工法の建物が日本に紹介され始めた頃だったと思いますが、在来系の建物で、その断熱技術を採用し、結果、床、壁を腐らせた事がありました。当時、大工さん達は、“断熱材を入れると建物が腐る”と恐れ、慄いていた事を思い出します。

しかし、時代の流れとして住宅の省エネルギー化は必死で、関連各メーカー、研究機関等により結露防止工法は開発され、試行錯誤、現在に至っています。

住宅が気密化(アルミサッシ等の普及)される以前の建物は、窓や玄関の引き戸等外部の建具を木製建具を採用していました。

外壁や床下、天井等全体に通気性の良い建築材料で蔽われ、日本の気候・風土にはうってつけの建物だったのです。

そして、この建物は耐久性に優れ、誰でもが容易にメンテナンスする事ができるよう工夫されており、100年以上使い続ける事ができました。

とはいっても、現代日本人のライフスタイルを考慮すると後戻りは現実的ではありません。最新の断熱工法が結露の問題をクリアーしたかどうか、今現在の時点では言い切ることはでこませんが、結露現象の成り立ちそのものは、大分解明されてきたようです。

但し、問題が問題だけに一般的には、建物を作る側も、住む側も双方共にこの問題の理解にはほど遠いのが現実です。特に、現場の職人さんレベルの方たちが理解できていないことは今後のメンテナンスも含めて心配のひとつです。

弊社を訪れる多くのお客様が心配されていることの一つが、この断熱の問題です。回答を求めてハウスメーカー、工務店を訪ねまわるのですが、行く先々で違う答えが返ってくるので、かえって混乱の原因になるそうです。

さて、弊社においては、“ダンシステム”という建物の結露防止工法を20年に亘って開発してまいりました。そして、その結果も現場において確認しております。

将来に禍根を残さない為、20年~30年で建て替えが必要という様な不都合を回避する為にも、建物の結露現象の基本的なメカニズムをご理解いただき、家を計画する際の判断材料の一つとして活用していただけたら幸いに思います。

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1-1.結露現象に関わる空気の基本的性質

多くの方は、結露現象がなぜおきるのかということについては、経験則でおぼろげながらお判りのことと思います。

しかし、この後で説明する建物の躯体内の結露現象をご理解いただくためにも、誰もが日常経験する結露現象を例にして、その発生のメカニズムを、条件を単純化して説明したいと思います。

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1-1-A.空気(湿り空気)は、乾き空気と水蒸気から成り立つ

空気には、水蒸気の他に、酸素や窒素、二酸化炭素、ヘリウム等の成分が含まれています。水蒸気を除くと、他の成分は一定の割合で成り立っています。

そして、水蒸気を除いた空気を乾き空気と呼びます。

生活の中での結露現象においては、この水蒸気が大きく関わっています。

湿り空気 水蒸気 乾き空気

酸素 水蒸気

水蒸気

水蒸気
酸素
窒素 窒素
二酸化炭素 二酸化炭素
ヘリウム ヘリウム
 
水蒸気
 

 

ここでいう湿り空気は、一般の生活の中の空気の意味です。

又、乾き空気とは、理論上での空気の呼び名です。

1-1-B.湿度(相対湿度)は、乾球温度と水蒸気の量に左右される

(水蒸気分圧の比率で理論上説明される)

例1.

乾球温度水蒸気量相対湿度
A点 20℃ 0.006kg/kgDA 40%
B点 20℃ 0.009kg/kgDA 60%

下のグラフにおいて、A点(20℃、40%)の空気の水蒸気量は(0.006kg/kgDA)=6gです。この空気に3gの水蒸気を足して、水蒸気量を9gに増やすとB点(20℃、60%)の空気になります。

A点からB点への空気の性質の変更は加湿です。

又、逆にB点からA点への移動は除湿にあたります。

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1-1-C.湿度を一定とすると、温度が高いほど、水蒸気の量を多く含むことができる

例2

乾球温度水蒸気量相対湿度
A点 20℃ 0.006kg/kgDA 40%
B点 50℃ 0.032kg/kgDA 40%

下のグラフのA点(20℃、40%)の空気の水蒸気量は6gです。

この空気の温度を50℃まで上げて、しかも、湿度を40%に保つ為には、水蒸気量を26gたして32gにします。

この時の空気がB点(50℃、40%)です。

暖房等で、温度を上げる場合、単純に温度だけを上げると乾燥(湿度が下がる)していまいます。

空調設備がそうですが、加温すると同時に加湿も行います。

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1-1-C’.ある空気で、水蒸気の量が一定とすると、温度が高いほど湿度は低く温度が低いほど湿度は高い

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下図のチャート写真は、冬の晴れた日(20052.272.28)の終日の外気の温度・湿度の変化を計測したものです。

このチャートからも、気温が上昇すると、湿度が下がり(乾燥する)、気温が下がると湿度が上がることが読み取れます。

一般的には、冬は乾燥するものだと単純にとらえられていますが、実は雨の日、雪の日、日中晴れた日の夜間から早朝にかけては、湿度は70%以上100%に近い数値を示すことが多々あります。

10-1

4

下図のグラフのA点の空気(20℃、40%)を32℃まで暖めるとB点の空気(32℃、20%)となります。これは単純暖房です。暖房すると、空気が乾燥して感じる理由です。

又、A点の空気を12℃まで冷やすとC点の空気(12℃、70%)となります。夏でも夜間や朝方冷えを感じるのはこれが理由です。

11-1

1-1-D. 空気は、湿度が100%になると結露する。

住宅を例にとれば、浴室やキッチンなど湿気の発生する部屋で良く経験します。

その部屋の空気の量に対してある一定以上の水蒸気が発生すると、窓ガラスや壁、天井に水滴がつきます。

生活の中では、窓を開けて外気を取り入れたり、換気扇を回して湿気を含む空気を外に排出します。

但し、同じ空気条件でも、例えば、浴室の内装にムク板を張ったり、キッチンの内装にケイソウ土等の保湿量の大きい内装材を配した場合は結露しない事もあります。

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例3

乾球温度水蒸気量相対湿度
A点 50℃ 0.032kg/kgDA 40%
B点 32℃ 0.032kg/kgDA 100%
C点 20℃ 0.015kg/kgDA 100%

下図のグラフは、A点の空気の温度をC点まで下げた時の空気の状態の変化を表したものです。

下図のグラフのA点の空気(50℃、40%)を単純にB点(32℃)まで下げます。この時B点の湿度は100%(飽和線に触れる)となり、B点の空気は結露し始めます。

ある空気を単純に温度だけを下げて、グラフ上、飽和線に触れたときの温度をその空気露点温度といいます。

次に、B点の空気(32℃、100%)の温度をさらにC点(20℃)まで下げます。

この時B点からC点までは湿度の変化はなく(飽和線上の移動=湿度100%)、代わりにこの移動に伴い結露水が流れ出ます。

その量は、上の表から

    0.0320.015=0.017kg/kgDA

つまり、乾燥空気(DA) 1kg17gの水が流れる事がわかります。

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1-2.身近の起こる結露現象

結露現象は、生活の中で様々な形で見ることができます。

自動車に乗っているとガラスが曇ったり、家の窓ガラスが曇ったりする現象は表面結露といいます。又、晴れた日の夜間から早朝にかけて、急激な気温の降下によって発生する霧や、霜、モヤ等は放射冷却による一種の結露現象です。

もう一つの厄介な結露現象は、これから取り上げようとしている、住宅の躯体内部で発生する躯体内結露です。この現象は、木造住宅の耐久性や、住む人の健康にも重大な影響を与える恐れがあります。

その躯体内結露現象をご理解いただくために、わかりやすい例として、コップの表面に発生する結露、住宅の窓ガラスの結露がどういうふうにしておこるのかを、空気線図(空気の性質を表すグラフ)を使って検証してみたいと思います。

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1-2-A.冷たい水の入ったコップ表面の温度

レストランや、コーヒーショップに入りますと、まずコップに入った水が出てきます。そして、必ずといっていい程コップ表面に水滴がついています。

そして、その水滴は、水を飲まずにおくと時間の経過と共にテーブル上に流れて小さな水溜りをつくります。その後も放置しておくと、コップの表面から水滴が消え、テーブルの水も乾いてきます。

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1-2-A-(1).運ばれてきた直後のコップの状況

コップ周囲の空気をa 30℃、60%)と仮定します。そして、コップの中の氷水の水温をb10℃)とします。つまり、空気aが、温度bの物体に触れると、性質がどう変化するかをみます。

コップ表面付近の空気は、周囲空気と対流を起こしながら下がっていきます。この過程で周囲の空気が露点温度になりコップ表面に結露水を発生させます。

A-(1)の現象を空気線図上で説明

コップのおかれた周辺の空気a点=(30℃、60%)が、コップ表面の冷たい温度に触れ対流を起こしながらa’点(21℃、100%)の空気へと性質を変えます。a’点の湿度は100%(飽和線)で、この空気線図上にある空気は、この飽和線に交わる空気に変質すると、必ず結露を発生します。

この時の温度は、a’点を真下にさっがってみると、21℃と読み取れます。この温度は、空気a の露点温度と呼びます。コップの表面の温度がこの温度まで下がった時、コップ表面は曇った状態になります。

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1-2-A-(2).運ばれてからしばらく時間が経過した後の状況

コップ表面の温度が、周囲の空気の影響により(対流による)暖められ、次に、コップの中の水の水温も上昇(熱伝導による)します。この頃になると、コップ表面への新たな結露は減り始め、流れ出た結露水がテーブルに水たまりをつくります。

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A-1-(2).の現象を空気線図上で説明

a’点の空気(21℃、100%)は、水蒸気が飽和状態となり、これ以上の水分を含めない状態になっています。しかし、温度はいやがおうでも下がります。そして、その余分な水蒸気は、結露水となって流れ出ます。その量は、空気線図の縦軸の水蒸気量の差の分です。

0.01060.0078=0.0028kg/kgDA

つまり、乾き空気1kg中、2.8gとなります。

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1-2-A-(3).運ばれてから長時間を経過した後のコップの状況

コップが周辺の空気の影響(対流+熱伝導)により暖められ、コップの中の水の温度も上がってきます。

この頃になると、コップ表面の新たな結露の発生はなくなり、だんだんと乾いてきます。

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A-(3).の現象を空気線図で説明

b点、c点の温度は、周囲の空気に影響され、b‘点、c’点に性質を変えます。その後、a点の空気と同じ温度となります。

このサイクルは、いわゆる単純冷房の様子と同じです。

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1-2-B.窓ガラスの結露

冬季の生活の中で、わずらわしく感じる窓ガラスの結露。

毎朝、窓ガラスや窓枠が水滴で濡れ、拭き取りを怠ると木枠が腐ったり、壁の表面にカビが生えたり、面倒この上ない厄介者です。

この現象は、スキマ風の多い建物ではおきません。比較的、密閉度が高かったり、湿気の発生が多かったりする住まいで多く見られる現象です。

実際の住宅においては、結露現象は様々な要因で発生します。暖房器具によっては、燃焼にともなって水分を発生するものもあります。建物の断熱性能が悪い場合も考えられます。又、建物を構成する建材の保湿量や保熱量も関係します。部屋の容積も関係します。

結露現象のメカニズムは解明しているという話は聞いておりますが、生活のスタイルは住まう人により千差万別です。そこが、住宅に関わる結露問題の難しさだと思います。

このように、複雑な要因からおこる結露現象を、窓ガラスの結露を例に検証してみたいと思います。

但し、分かりやすくする為に、条件を単純化して説明したいと思います